株価は週後半に乱高下し主要指数は金曜の下げでマイナス圏に転じた。ただしナスダック100は主要ハイテクのそれまでの上昇もありプラス圏に留まった。金曜の急落は長短金利逆転が投資家に景気後退を想起させリスク回避姿勢を加速したためだ。この長短金利逆転の予兆力には諸説あるので軽々な投資行動は控えるべきだ。先週の乱高下は企業業績下振れと金利低下がもたらすPER上昇との綱引きの過程で生じる渦のようなものだろう。

さて先週後半にBarron’s主催で全米の独立系のフィナンシャル・アドバイザー(FA)がユタ州ソルトレークシティーに集う”Barron’s Independent Summit”に出席した。Barron’sはFAを独自の評価基準でランキングし公表しており、全米のFAや投資家が注目する大型企画の一つだ。証券出身の私は米国の証券営業に常々興味があったし、Barron’s誌の関係者にも会えるとのことで興味深くコンファレンスに参加した。

水曜日午後のブロックチェーンをテーマにしたパネルディスカッションを皮切りに夕方の全体ディナーが今回のサミットのキックオフ。木曜と金曜は業界の全体テーマを扱う主要セッションを軸に分科会が50分刻みで続く。全体テーマは業界の課題やFAに求められるリーダーシップなど業界環境の変遷や将来像などを参加者全員で考える。その後の分科会ではより具体的なトピックスで、例えば私は、FAビジネスのM&A、超富裕層を専門にカバーするFAの活動報告等に興味が引かれた。いずれのセッションもモデレーターと各分野の専門家3,4人がパネラーで登場し早口でまくし立てる。最後の15分ぐらいでQ&A、それに続くパネラーの“金言”や“本音”で締める。

参加者は全米有数のFAで皆さん成功者だから自信に満ち溢れ目も輝いていた。株式市場が年初来好調なのも当然ながら影響していると思う。参加者は白人の中年男性が多く、分科会でも話題になったが業界の担い手として女性、マイノリティーそして若手をどのように発掘・育成するかも課題の一つだった。さらに資産配分や周辺業務の外部委託を促進することで、顧客との人的関係の強化・維持も喫緊の課題だった。

さて株式市場は各参加者の自主的、能動的な営みによってはじめて機能するということを今回のコンファレンスで再確認した。つまり、市場には産業資金の調達側のニーズがあるのと同様に投資家の資産運用に対するニーズと要求もまたある。それらが対等の立場でぶつかり合うことで公正な市場価格が形成される。

それら企業と投資家というプリンシパル(行為主体、依頼人)に対するエージェント(代理人)として投資銀行がありFAがいる。そして米国では投資家のFAへの信頼度が高くその機能に対し正当な対価を払い、FAも顧客の期待に応えるべく不断の努力を欠かさない。中立的な評価機能を有するBarron’sから評価されたトップFAが一堂に会して互いを認め合いながら知恵を出し合い業界のさらなる繁栄のために結束する。今回のコンファレンスの意義を極めて肯定的に捉えればこういうことではないか。

ところで近年Barron’s誌は投資家の変化するニーズに応えるべく資産運用をテーマにした企画や記事に注力しているがこのことを関係者との面会で確認できた。また同誌のエディターには『バロンズ拾い読み』の記事選択の基準や日本人投資家の興味・志向について説明する貴重な機会を得た。

さて今週の『バロンズ拾い読み』だが、このコンファレンスと時機を合致させているのだろうが、カバーは【家計資産管理】だ。長寿や人口動態そして家族構成の変化が個々人の資産管理にもたらす影響や問題点を議論している。米国の資産保有者層-つまりはシニア世代なのだが-が抱える退職後の資産運用、高騰する大学の授業料、そして巣立たぬ子どもへの資金補助等が主要な関心事だ。

日本でも常々扱われるテーマで我々も全く同感そして共感できる内容だ。ただし米国人の悩みを解決するためには株式市場がある。この信頼性の高い資産運用市場は万人に均等な機会を約束している、つまり“社会的公器”にも等しいと私は思っている。そしてこの“公器”へのアクセスは実は日本人にも十分に開放されているのだ。つまり日本人にも資産運用に関する解決の場は目の前にあるのだ。日本で喧伝される安易で陳腐で享楽的そして投資家の無知を逆手に取った資産運用手法に惑わされることなかれ。まず『バロンズ拾い読み』で米国資産運用の「今」と「機会」を知ろう。まずはそこからだと思う。ありがとうアメリカ株式。

『バロンズ拾い読み』編集人 川田重信