*先週は株式市場が上昇してもおかしくない材料が十分にあったにもかかわらず、ダウ工業株30種平均(NYダウ)は直近の5週間で4回目の下落となった。欧州連合(EU)と英国は英国のEU離脱の条件に関して合意して、英国議会の承認を得るだけとなった。医療保険会社ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)は市場予想を上回る業績を発表して株価が上昇しただけでなく、ヘルスケア・セクター全体を活気づかせた。一方、JPモルガン・チェース(JPM)シティグループ(C)などの銀行株は予想を上回る業績を発表しただけでなく、米国経済が景気後退に向かっている訳ではないことを示唆した。

*悪材料としては、トルコがシリア攻撃、中国の国内総生産(GDP)は1990年代以降で最も低い成長率となった。米国の9月の小売売上高は前月比で0.3%程度の伸びが予想されていたのに対して同0.3%。動画配信大手のネットフリックス(NFLX)が水曜日の取引終了後の決算発表直後で株価が10%以上値上がりしたにもかかわらず、木曜日は2.5%高で終了し、金曜日には6.2%下落。

*それでもS&P500指数とナスダック総合指数は週間ベースで上昇したが、NYダウは、大手航空機メーカーのボーイング(BA)、ヘルスケア大手のジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J、ティッカーはJNJ)、IT大手のIBM(IBM)の3銘柄が影響してマイナス圏で終わった。

*株式市場にとって、米ドルの動きが助けになるかもしれない。2017年以降で最も割高な水準にあった米ドル指数は、先週1.2%下落して97.14となり、7月以来で最低水準。米ドルの下落は、米国の多国籍企業と景気敏感株の後押しとなる可能性がある。

 

2019年10月21日号『バロンズ拾い読み』より
7. The Trader せっかくの好材料を生かしきれず 【米国株式市場】
個別銘柄の悪材料でNYダウは下落したが、その他の主要指数は堅調