*環境・社会・ガバナンス(ESG)は、機関投資家の世界では一般化したが、個人投資家向けファンド業界にはほとんど影響を与えていない。モーニングスターによれば、2018年末時点で、目論見書でESGに言及しているミューチュアルファンドと上場投資信託(ETF)の運用資産額は1610億ドルにとどまり、米国全体の運用資産額である22兆1000億ドルに比べるとごくわずか。ESGが主流となるには、リターンの最大化との関係をめぐる混乱などの障害を乗り越えなければならない。

*かつての「社会的責任」投資家は、たばこや銃関連の銘柄といった「罪の株式」(sin stock)を除外するだけだった。しかし、現在は、例えばエネルギー消費の削減によって利益率を高めた製造業者など、サステナブルな慣行が利益を大きく押し上げた銘柄を探している。資産運用会社は、サステナビリティー関連の懸念を無視する企業のリスクを反映するために、株式や債券の評価方法を変えている。

*ESGはアジアの一部でも広がっている。グローバル・サステナブル・インベストメント・アライアンスによれば、日本でESG投資が運用資産額に占める割合は、2016年の3.4%から2018年には18.3%に上昇。

*機関投資家の世界での勢いにもかかわらず、ESGは個人投資家に人気がない。バンガードはPRIに署名しており、気候に配慮した議決権行使などを実施している。同社最大のESGファンドは、運用資産額54億ドルのバンガードFTSEソーシャル・インデックス(VFTSX)で。昨年には2本のESG関連ETFを設定し、5月には同社初のアクティブ運用によるESGミューチュアルファンドを導入。しかし、同社のESG戦略全体の運用資産額は100億ドルで、運用資産額全体の5兆4000億ドルの0.02%にすぎない。

*責任投資には標準的な実践やベンチマーキングの手法が存在せず、ファンドの運用成績は強弱まちまち。バンガードFTSEソーシャル・インデックスは、2000年の設定以降の年率リターンが4.3%で、S&P500指数の5.5%を下回る。MSCIオールカントリー・ワールドESGリーダーズ指数は、同指数と同様だがESGを考慮していない指数を過去10年で若干アウトパフォーム。しかし、上記指数の米国版ではESG指数がアンダーパフォームしており、その幅はオールカントリー指数のアウトパフォーム幅と同一だった。

*機関投資家の世界では、ESGは経済的な意味があるスクリーニング要因とみなされているが、アドバイザーや個人投資家からは、運用成績ではなく、社会や環境全体にプラスとなることを意図しているとみられることが多い。ESGが企業利益に与える影響、およびESGのリスク管理ツールとしての利便性を示す証拠は増加しており、経済的な理由でESGに反論するのは困難。

 

2019年6月24日号『バロンズ拾い読み』より
5. Will Values-Based Investing Ever Take Off? 価値観に基づく投資【ESG投資】
個人投資家からの人気は乏しいが、普及するのは時間の問題