*世界全体では5歳未満の子供よりも65歳超の成人の方が多い。国連の推定によれば、2050年には6人に1人(16億人)が65歳超となる。米国の参考となる国として日本、オーストラリア、スウェーデン、中国をウォッチャーや専門家に聞いた。
*日本:長く働くための指針
日本は高齢者の労働参加率が世界で最も高い国の一つ。65~69歳の男性の労働参加率は、米国の38%に対して日本は59%である。多くの日本人にとって、65歳をとうに超えても働き続ける最大の理由は社会参加と生きがいが、モチベーションの上位に入る。しかし、全米退職者協会(AARP)によれば、日本の高齢者の約70%は65歳以降も働きたいと考えているが、実際に雇用されているのは20%のみ。日本政府はこの状況を変えようとしており、国の経済再活性化戦略の重要な要素として高齢者の雇用機会の拡大を掲げる。
*オーストラリア:退職資金の調達の指針
働く期間の長期化と働いている間の貯金を増やす支援、二つの方法の間で完璧にバランスを取っている国は存在しないが、オーストラリアのアプローチは最高の手法の一つ。年金制度の財政の持続可能性と所得の十分性に関して、オーストラリアは先進国で最上位クラスである。スーパーアニュエーション(スーパー)と呼ばれる加入必須、完全積立方式の雇用者年金制度(現在の雇用者の拠出割合は従業員所得の9.5%、2025年には12%に上昇する予定)、資力調査に基づく定額の老齢年金を導入している。
*スウェーデン:罪悪感のない長期ケア
スウェーデンでは政府が長期ケアを提供する。同国は個人の独立性を重視する文化が強く、子供が親や親戚の面倒を見ることを期待されていない。実際、多世代の世帯に住んでいるスウェーデン人高齢者はわずか5%にすぎない。また、スウェーデンは女性の労働参加率がアイスランドに次ぐ世界第2位で「皆が親をナーシングホーム(医療や介護を提供する福祉施設)に入れる。親もそれを望んでいる」。課題は支出が高齢化に追い付いておらず、制度が疲弊し、住居型施設の空室が減少していること。
*中国:介護の指針
中国の「介護危機」は規模が違う。2030年には、現在の米国の人口を超える3億6000万人の中国人が60歳超となる。中国は長期ケア産業の育成に乗り出したが、介護の発展の大部分が都市を中心に展開しており、大衆には手が届かない。住み込みの家事手伝いを雇うには毎月1000ドル(中国人の大学新卒者が金融サービス業界の多国籍企業で得る月収とほぼ同額)。中国がより積極的な措置を実施すれば、米国が同様の課題に直面した場合に参考となる可能性。
2019年9月9日号『バロンズ拾い読み』より
1. How to Fix the Global Retirement Crisis 各国の高齢化をめぐる事情【高齢化】
世界的な高齢化の危機にどう立ち向かうか
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