■ 今年のホリデーシーズンは好調
*消費者景況感は21世紀なって最高水準、失業率は1969年以来の低水準。賃金はほぼ10年ぶりのペースで上昇、年末時点の住宅価格が昨年よりも上昇することは確実。
*今年のホリデーシーズンの小売売上高は前年比5%増予想で過去5年の平均を上回るペース。
*その一方で小売企業はアマゾン・ドット・コム(AMZN)の成功から教訓。「ここ数年守勢だった小売企業が攻勢に転じている」、「サプライチェーンのスピードを上げ配達期間を短縮している」と指摘のアナリストも。
*苦戦する店舗の問題は、アマゾン・ドット・コム経済ではなく自らにある。
*勝ち組を探し出すには、独自の商品が品薄となっているモールや店舗を慎重に見る一方でデジタル戦略に長けた小売企業に強気な見方をすべき。
■ コールズ(KSS)とターゲット(TGT)はアウトパフォームに向けた態勢が整っている
*百貨店チェーンのコールズ(KSS):オンラインで単品の注文を受けると(単品注文は電子商取引を手掛ける小売企業にとって利益率を押し下げる大きな要因)、同社ソフトウェアは顧客が追加品目の割引に魅力を感じて注文した確率を即座に計算。オンライン買い物カートを注文でいっぱいにする可能性の低い顧客に対しては、近隣の店舗に品物を取りにくれば特典プログラムの一つ“コールズ・キャッシュ”を例えば「5ドル進呈」と申し出る。それによってコスト削減、来店者数が増え販売機会が増える。
*同社の2018年通期(1月期)の既存店売上高は前年比1.8%増、EPSは同31%増の5.49ドル。過去2年間の株価リターンは45%だが2018年予想株価収益率(PER)はなお14倍以下。
*目標株価を20%超の上値余地に相当する92ドル。
*総合ディスカウントストアのターゲット(TGT):目標株価を10ドル引き上げて100ドルに(現在の株価は81ドル)。駐車場でネット注文の商品を車から降りることなく受け取ることができる“カーブサイド・ピックアップ”サービスが好評。トイザらスの経営破綻に乗じて「玩具デパート」を数百店舗に展開。アマゾンを真似て今年のホリデーシーズン中の配達を注文から2日以内に無料で実施。2018年度上半期にはデジタル経由の売上高は前年同期比35%増を記録。今年度の既存店増収率は4.9%、EPS成長率は15%。
*ウォルマート(WMT):特に食料品のデジタル販売で成功。ただしターゲットは顧客を引き付ける自社開発の独自商品で一歩リード。投資家にとってターゲットの方が魅力的か。ウォルマートの過去2年間のリターンは50%超、一方でターゲットは14%にとどまっているため、ターゲットの予想PERはウォルマートより30%以上割安な水準。両社のバリュエーションは過去10年にわたり似通った水準にあった。
■ 割高なバリュエーションに見合った価値を提供するティファニー(TIF)とホーム・デポ(HD)
*宝飾品ブランド、ティファニー(TIF):昨年から新たな経営陣の下でアクセサリーおよび宝石類のデザインの近代化に着手、2018年度の既存店売上高は前年比6.2%増、EPS成長率は17%と予想。
*株価は売上高の15%以上を占める中国での減速懸念で7月の140ドルから直近では104ドルに下落。今年夏に27倍だった予想PERは約21倍に低下。
*ホームセンターのホーム・デポ(HD):木材はアマゾンの脅威ではないが、工具のような小型の商品は標的。工具メーカーのスタンレー・ブラック・アンド・デッカー(SWK)は今年10月、ホーム・デポとの間でスタンレー・ブランドの工具と工具箱の独占販売契約を締結。2018年の既存店増収率は5.6%、EPS成長率は31%見込み。今後1年の上値余地を14%配当利回りを2.3%と予想。
*家電量販店チェーンのベスト・バイ(BBY):過去5年間のリターンは75%。テレビ販売の急増やアップル(AAPL)製品の販売好調が寄与。2018年の既存店増収率は4.2%、EPS成長率は16%と予想、予想PERは13倍と魅力的。テレビ価格は低下。短期的には販売台数の増加が見込みも長期的な売上高には結びつかない。しかもアマゾンは最近、アップル製品を直接販売することでアップルと合意。ベスト・バイは、サービス企業に変身しスマートホームの導入を手掛け、技術サービスをオンデマンドで提供するための取り組み実施も既存店の落ち込みを相殺するにはまだ未成熟か。
2018年11月19日号『バロンズ拾い読み』より
2. These Retailers Are Set to Thrive This Holiday Season 年末商戦の勝者 【小売株】
攻勢に転じたコールズ、ターゲット、ホーム・デポ、ティファニーに注目