■ 異なるレベルのリスクコントロールを提供するETF
*仕組み債ほど評判の悪い投資商品はない。しかし新しい上場投資信託(ETF)でネガティブな印象が和らげられるかも。
*S&P500指数などの株価指数上昇の恩恵を提供しつつ、債券のような元本保証を併せ持つ仕組み債は理論上理想的。しかし現実は莫大な手数料設定の温床で流動性が低く、市場ストレスの下でデフォルト(債務不履行)に陥ってきた経緯がある。
■イノベーター・キャピタル・ディフェンド・アウトカムシリーズの6本のETF
*イノベーターS&P500バッファー(BOCT):2018年10月1日に購入した投資家に対し2019年9月30日までに15.3%を上限とする潜在的リターンを提供。経費率0.79%を引いた後の潜在的リターンは14.5%。期日までにS&P500指数が15.3%を超えて上昇した場合上回った分の利益は無し。一方でETFは9%の潜在的損失から投資家を保護。つまりS&P500指数が10%下落すれば投資家の損失は1%、11%下落すれば2%にとどまる。
*イノベーターS&P500パワー・バッファー(POCT):アップサイドの上限は10%で、ダウンサイド保護は15%。
*イノベーターS&P500ウルトラ・バッファー(UOCT):アップサイドの上限が10%、損失については5%発生してから初めてバッファーが発動し、最大30%の損失から投資家を保護。
■ ETFならではの利点と欠点
*利点: ETFなので原資産はS&P500指数オプション。銀行が倒産して債務不履行になるリスクはなし。
*欠点:仕組み債ならばS&P500指数のパフォーマンスに基づいて所定のリターンを保証。不履行なら投資家から破産裁判所に発行者の責任を申し立てることが可能、このETFにそのような保証はない。
*仕組み債同様、ETFには株式配当が含まれていないため、S&P500指数の現在の2%の配当利回りは得られない。
*ETFは日々売買されるため、現在の価格は当初の価格とは異なる。例えば、イノベーターETFが発行されて以後S&P500指数が下落した場合、ファンドの初期のバッファーはあまり残っていない一方、設定されている上限よりもさらに高い潜在的アップサイドが存在
*「これらのETFは、仕組み商品と同じ。顧客のためにならない。『ダウンサイドのバッファーを提供する』と言うのは優れたマーケティングだが、実際には、高い手数料や取引コストに加え、市場リターンを失うことで、実現する保護以上のコストを支払っている。」

2018年12月3日号『バロンズ拾い読み』より
2. Structured Notes: Can New ETFs Make Them Work for Investors? 新商品 ETF】
新しいETFは、仕組み債の良さを実現しつつ弱点を補うことができるか