*半導体株は今年初め、需要が年後半に大幅に改善するという期待感と、米中間の貿易交渉が合意に達するという確信によって急上昇し、上場投資信託(ETF)であるiシェアーズPHLXセミコンダクターETF(SOXX)の年初から4月までの上昇率は35%に達した。ところが半導体メーカーの直近の決算発表でのさえないコメントと貿易戦争の激化に呼応して株価は急落し、iシェアーズPHLXセミコンダクターETFは5月に17%下落した(同じ期間におけるS&P500指数の下落率は7%)。投資家の過剰な反応である可能性は低い。

*例えばテキサス・インスツルメンツ(TI、ティッカーはTXN)は決算発表で、半導体の下降局面は通常4~5四半期継続すると強調し、通信インフラ需要の不安定な状態が今後継続する可能性があると指摘。インテル(INTC)の2019年通期見通しは市場予想を下回り、同社は今期についてより慎重な見方をしていると述べた。エヌビディア(NVDA)は5月16日、データセンター市場の視界は不良だと述べ、わずか3カ月前に発表していた通期予想を撤回。同社の株価は15%下落。

*サスケハナ・ファイナンシャル・グループの半導体アナリスト「投資家は辛抱する必要がある。最近の株価調整を買い場とみなせるようになるには、視界が改善しなければならない」。また、ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)への半導体販売に対する最近の規制は、株価に完全に反映されていないもう一つの大きなリスク要因だと指摘。同社は世界の無線通信局設備、ネットワーク・ルーター、スマートフォンの市場でそれぞれ29%、25%、14%のシェアを持つ。中国における同社の5Gネットワークの展開に問題が生じた場合、世界中の半導体産業が打撃を受ける可能性がある。

*ハイテク投資家は、マクロ経済と景気循環のリスクにさらされている半導体の代わりに、強力な製品サイクルと市場シェア奪取能力を持つ、より底堅い企業に注目すべき。例えばペイパル・ホールディングス(PYPL)、アルファベット(GOOGL)任天堂(7974)

 

2019年6月3日号『バロンズ拾い読み』より
8. Chip Stocks Have Far More Than Tariffs to Worry About 視界不良【半導体セクター】
下半期の需要回復見通しは大幅に後退、貿易戦争とファーウェイ制裁が足かせに