*対米外国投資委員会(CFIUS)は、米国資産に対する外国人の買収を国家安全保障の観点で審査する機関で、不透明ながら権限が拡大しており、クロスボーダーの合併買収の状況が一変する恐れがある。この権限は米中間の貿易交渉が終結した後も長く残る可能性がある。近年では、当時シンガポールを本拠としていたブロードコム(AVGO)によるクアルコム(QCOM)の買収に安全保障上の懸念(第5世代移動通信(5G)におけるクアルコムの役割)を提起し、トランプ大統領が買収を阻止。

*昨年8月には外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)が成立し、公的/民間部門、規模にかかわらず広範な取引を審査する権限が与えられた。「特に懸念される国」からの「米国の技術的優位または国家安全保障への脅威となる可能性のある」あらゆる取引が対象となる。日本のソフトバンクグループ(9984)も、「CFIUSから脅威とみなされないために」ウーバー・テクノロジーズなどへの取締役の派遣を断念すると報道されている。

*しかしCFIUSはドイツ・テレコム(DTE.ドイツ)が支配するTモバイルUS(TMUS)とソフトバンクが支配するスプリント(S)の合併を認めている。もしTモバイルがファーウェイ(華為技術)からハードウエアを購入するとしたら、CFIUSはこの合併を阻止したであろうか。5Gが理由でクアルコムの件が阻止されたのであれば、Tモバイルはなぜ承認されたのか。CFIUSの審査は曖昧なルールに基づいた不透明なものである。

*世界中でCFIUSのような機関が重要技術と国家安全保障の両方に判断を下すような状況は、保護主義の台頭の兆候であると同時に原因でもあり、これは最終的には誰のためにもならない。

 

2019年5月6日号『バロンズ拾い読み』より
3. The Biggest Threat to Mergers 買収合併への最大の脅威 【対米外国投資委員会】
連邦機関の不透明な権限拡大がM&Aへの最大の脅威