■概況
例年四月は最も株が上昇しやすい。NYダウの過去20年の平均上昇率は2.25%で上昇確率は80%だ。過去50年(同1.87%、66%)でも100年(1.29%、61%)でもその傾向は変わらない。S&P500だと今年の4月は月初めの1週間ですでに2.1%上昇し、昨年の高値(9月20日)まであと1.3%だ。同じくダウ(10月3日)で1.5%そしてナスダック総合(8月29日)でも2.2%にまで迫った。

■「純化した株主資本主義」とカバー【強気相場】
米国の「純化した株主資本主義」空間に生息していない我々日本人が、米国の社会、経済の仕組みを体感することは易しくない、だから株式市場の理解もまた同様だ。ただしその株式市場を読み解くヒントが『バロンズ拾い読み』にはある。

早速だがこの強すぎる相場をどう見ているのか?カバーはそのものずばり【強気相場】だ。今回の上昇相場の残り火に懐疑的になるのはもっともだ。ファンダメ分析では①景気拡大の期間には寿命がある(はず)②長短金利逆転は景気後退の予兆(過去はそうだった)③市場にはサイクルがある(はず)と列挙されている。さらに①ヘッジファンドのポジションも空売りか株式の持ち高はここ数年来の低水準、②年初来の上昇過程で売るべき投資家がすでに売却済(=残るはあなただけ)などと警戒的なコメントもある。したがって株価は「今がピークに違いない」となる。そしてこの下落が今にも実現するかのような報道や特集記事に目が行くのが我々日本人の習性だ。これらの疑問や懸念に対し3名のストラテジストが反証しているので本誌で確認してほしい。

■米国人、米国人投資家とは
さて、米国の株価を決めるのは米国人で彼らは日本人のような従順な人達ではない。なんとしても自分の主義・主張・利益、すなわち“自己を実現”したいと必死に戦う人たちだ、そうやって育てられているしその自己実現に向かって努力し一生を終える。国と個人の相互依存の度合いや距離を各々が決める「自助努力王国の住人」だ。米国株式市場に向き合うときは彼らの価値観やメンタリティーを彼らの立場になって分析・判断できるかがカギだ。この読み解き作業は簡単ではない。それでも日本人に「忖度(そんたく)」しない報道に目を配るよう意識することで少しだけ「読解作業」に習熟すると感じている。『バロンズ拾い読み』も日本人に「忖度」しない情報源なので日本人投資家には必携だろう。

■日本人の「循環論」と米国人の「適者生存」、「創造的破壊」
ついでに言うと「強気相場が10年続いたからもうおしまい!」。これは日本人の心と体に染みついている「循環論(=“上げ”後“下げ”後“上げ”)」からは導きやすい結論だが米国株式市場には通用しないと思った方がいい。ちなみに米国市場を読み解くカギは「適者生存」と「創造的破壊」だ。そして彼らは「純化した株主資本主義」の“下僕”であり“門徒”だ。その一方でアニマルスピリットに溢れた戦士であり自助努力を尊ぶ勤勉極まりない人たちだ。その人たちの自己実現に必要なエネルギーを生み出す「株主資本主義の純化」のための修行をそう易々と放棄するはずはない。米国株式市場の行く末に対する我々の先入観や誤読と「米国に売り無し」と説くバフェットの信念の違いはこのあたりにあると思うのだがちょっと調子に乗り過ぎか?

■今週の記事から
今週号はいつもにもまして盛沢山の内容だ。2番の【投資スタイル】はバリューもグロースもないという日頃の「実感」を理解するのに役立つ。3番の【ETF業界】も寡占状態にある業界の問題点を指摘している。そして5番の【新アクティビズム】は投資の判断基準や市場参加者の道徳や行動規範について日米の違いを教えてくれる。また6番の【インタビュー】では新興国市場担当のファンマネが登場するが、この人の置かれた立場を慮ればまた違った景色が見えてくる。

さて第1四半期の決算発表も近くなってきた。個別銘柄は乱高下しやすくなるのでなるべくその場に居合わせないようにしよう。私の場合そうやって我が身を遠ざけて市場のノイズが放つダメージから身を守ってきた。ありがとうアメリカ株式。

『バロンズ拾い読み』編集人 川田重信