未曽有の急落相場について

■相場のうごきはジェットコースター


先週のニューヨーク市場の動きを見ていると疲労困憊だ。史上最大級の変動が2日続いた。新型コロナウイルスの影響拡大に対する懸念のみならず、サウジアラビアとロシアの交渉決裂による原油価格下落が拍車をかけ、市場はズタズタになった。その間にトランプ大統領が打ち出す政策に期待が寄せられて上げるのかと思いきや失望を買って暴落、再び打ち出された政策が好感され急騰・・・上へ下へのジェットコースター相場だ。

とにかくボラティリティ(変動率)が大きい。S&P500指数は先週5取引日の全てで4%以上の上下を繰り返した。ちなみに金融危機時の2008年のボラティリティは通年で2.81%だった。昨年は0.85%しかなかったが今年は年初来で1.83%だ。

さて3月12日(木)は売りが売りを呼びS&P500指数は9.51%下げた。そして翌日金曜日は9.29%の暴騰で木曜日の下落分をほぼ取り返した格好だ。S&P500指数の株価変化率は、12日の急落が歴代ワースト9位、13日の急騰は歴代ベスト16位だ。これで、ダウを除く主要指数は高値を付けた2月19日(ダウは2月12日)から20%以内の下落幅に収まっている。ちなみに20%下落を演じた後で投資家が注目する下値は、2018年年末急落時(12月24日)の2351、またトランプ大統領が選挙に勝利した2016年11月8日の2139である。

■投資の基本はS&P500だがナスダック100のパフォーマンスが比較的良好

今回の主要指数の動きを見ているとナスダック100がS&P500指数やダウよりも優れている。史上最高値を付けた2月19日までにナスダック100は年初来で11.3%上昇していたが、S&P500指数はその間に4.8%、ダウに至っては2.8%の上昇にとどまっていた。その後の急落場面ではS&P500指数は26.7%、そしてダウは28.3%も下落した。その間のナスダック100の下落率は25.3%でこの両指数より小さい。結果的に先週金曜時点で年初来の下落率はS&P500指数がマイナス19.9%なのに対しナスダック100はマイナス8.4%で収まっている。

また別の言い方をすれば、昨年ほぼ一本調子に上げた相場を今は急ピッチで後戻りしているが、ナスダック100の現在値7995は昨年10月24日(7967)レベルだ、つまりこれほどの急落でも5か月逆戻りしたと思えば少しは気が楽になる。一方でS&P500の2711は昨年2月4日の2725あたりか?つまり13か月以上も時計が逆戻りしたことなる。
端的に言うと、ナスダック100のETFを買い持ちしていた投資家で昨年10月以前に購入していたら損はしていない。

普段の講演会では、株式投資の基本のキの字はS&P500指数のETFだと言っている。しかしその後に必ず「ナスダック100のETFを加えるのも有効で私自身そうしている」と付け加えている。現状の強烈な逆風下でも私のアドバイスがそれなりに皆さんの資産形成に役立っているなら幸いだ。

■さよならトランプ

今回の新型ウイルス急落相場ではトランプ政権の危機管理に大きく疑問符がついた格好だ。直近のトラブル大統領の言動や政策を見ると、この人にはポリティカルキャピタル(政治的資本:政治家が有権者から得られる支持、支援、信託)がもうあまり残っていないと感じる。

それを端的に物語るのが下記のチャートだ。ラッセル3000は全米株市式場の時価総額の98%をカバーする指数だが、その指数の時価総額は当選後の3年半ほどで11兆ドル(約1200兆円)ほど増えたが、その増額分が今年の2月19日以降減少し先週木曜日時点で全額消滅している。

つまり、減税と金融緩和で株価を膨らました。その恩恵は株式を多く保有する一部富裕者層には多大な恩恵があったが、それが「絵に描いた餅」に終わった、ということだ。低所得者層に対しても今後直面する経済の向かい風が再選支持の足かせになるはずだ。私は現時点の相場急落はトランプ以降の不透明要因が混乱に拍車をかけていると考えている。

■過去の事例からは回復に2年半

さて、ここまで急落した相場は今後そうなるのか?参考になるとすればブラックマンデーか金融危機だろうか?そう思い2008年当時の資料を読んでみた。

かつて、2008年10月までの12カ月間の株価下落で株価は相当割安になった。S&P500指数は2008年の株価収益率(PER)に対し17.1倍、翌2009年予想PERに対しては11.6倍まで下落した。それでも過去の主要な景気後退期におけるPERに比べると必ずしも高くはない。1974年、80年、82年の景気後退期における実績PERは6.8~7.2倍。一方、1974年、1990年、2001年の景気後退期にはPERは12.9~23.5倍で推移した。新型コロナショック前の米国全体のPERは19倍程度だったが現時点では13倍を下回っているだろうか。かなり割安になっているように思われるが、今後の業績下方修正次第だ。但し、現行の金利水準や新型コロナウイルスの影響が一過性であることを考えると、過度に悲観することはないのではないか?つまりPERがこれ以上大きく下がる可能性は低いと考えるべきではないか。

この間の個別銘柄を少し見ると、高値を付けた2月19日以降1カ月弱の下落率は、コロナウイルスの影響を受けたクルーズ会社ノルウェージャン・クルーズライン(NCLH)の▲78.66%を筆頭に、同じくクルーズ会社のロイヤル・カリビアン・クルーズ (RCL)▲70.88%やカーニバル (CCL)▲59.44%、原油価格下落の影響を受けた独立系エネルギー会社アパッチ(APA)▲71.65%や石油生産のオクシデンタル・ペトロリウム(OXY)▲66.45%など目を覆うばかりの数字が並ぶ。一方で、2月19日以降3月13日までに値を上げた銘柄は、バイオ医薬品のリジェネロン・ファーマシューティカルズ (REGN)+16.15%やギリアド・サイエンシズ (GILD)+5.05%など、わずか10銘柄しかないらしい。

双日総合研究所の安田佐和子さんによると、20%超の下落から弱気相場入りしたケースが少なくとも過去9回ある。世界恐慌を除くと、平均下落率は39.5%、直近高値回復に要した期間は平均29.1カ月だった。現在からさらに20%程度の下落はあり得るかもしれず、回復に時間を要するかもしれない。今回のコロナショックは米国市場に定期的(約10年に一度)に下される鉄槌なのだろうか。しかし、鉄槌で地が固まって一層成長してきたのが米国株式市場だ。私は、その強さを信じながら、従来の長期資産形成インデックス投資のスタンスを継続する。

https://www.marketwatch.com/story/where-does-the-stock-market-go-from-here-after-the-worst-drop-since-1987-heres-what-the-analyst-who-called-the-2018-rout-says-2020-03-13?mod=home-page

■今回の急落相場も長期で見れば・・・

今回の急落は金融危機以降に株式投資を始めた投資家にとって初めての経験だろう。下落率27%は1987年10月19日のブラックマンデーをはさんだ34%下落に次いで大きくその急落スピードも半端ではない。ちなみにブラックマンデーは1日で20.5%も暴落した。その後2000年のITバブル、2008年の金融危機を経て今回の急落がある。

確かに株価の変動は激しく、ここまでゆっくり増えて来た自分の資産がまるで真夏の氷のようにみるみる小さくなる。そしてその翌日にはある程度戻すので期待を抱かせる。ところがその翌日は東京時間で不穏な動きが漂い、案の定寝ている間にまたまた暴落だ。これでは気持ちも動揺し、株式投資を資産形成の柱にすると決めた決意が大きく揺らぐ。さらにこれまで米国株式投資の優位性を他人に吹聴してきた自分の信用や人格まで否定され気が滅入るかもしれない。

そう、相場とはこういうものなのだ。こんな時は次ページの長期チャートを眺める。そしてこの急落も時間が経てばきっとこのチャートの小さな凹みにしか見えない時がくる。そしてその時にも投資を続けた自分の胆力の証明になる日が来ると思えてくる。それが米国株式投資というものだ。

P500指数のチャート

https://www.macrotrends.net/2324/sp-500-historical-chart-data